「親子の絆」をテーマに活躍する方へ、アルバムえほんの直撃インタビュー


子育てを見守り続けて、30余年。体験型幼稚園の園長先生に「親子の絆」について伺いました。

埼玉県川越地区に自然を通して様々な体験ができる『ひかりの子幼稚園』があります。教科書はないけれど、体験というページはいっぱいあって、毎日が面白くてわくわくすることばかり。どの子も瞳をキラキラさせて園庭を走り回っています。体験が子どもたちの豊かな感性を育んでいる・・と語る園長の内田先生にお話しをお聞きしました。

ひかりの子幼稚園 写真

─ ベットタウンに突如現れた広い敷地!たくさんの遊び場がありますね。

ここは、みんな自由に何をしてもいい空間なんです。ウサギも、ヤギも、ニワトリも、犬もいて、小動物の世話をする子もいれば、木のぼりする子、砂場で遊ぶ子も様々ですよ。自分たちで選んだ遊びの中に主体性が芽吹くので、自分で遊びを決めることは、とても大切なことです。



─ 園庭の奥には、立派なウサギ小屋やヤギ小屋、そして焼物小屋まで…。倉庫の中には大工道具が所狭しと置かれている。一瞬幼稚園ではなく、ちょっとした集落を連想してしまう。

いつでも汚れていい格好で園庭の片隅を園長室にしています。このカバン掛けも僕が作ったの。それから本棚とかイスなんかも、DIY店で木材を買ってきてなんでも作っちゃう(笑)。本棚はね、本好きな子になってほしいから、教室、階段、園庭など、あちらこちらに置いてますよ。

─ 青空の下で紙芝居や絵本を読んできかせるコーナがあったり、園庭にぞうの本棚が置かれていたり、園舎に続くテラスでも絵本が楽しめるようになっている。ついさっきまで走り回っていた子供たちが、ふと絵本に夢中になる姿が目に浮かぶ。

絵本はすごく読んでほしい。でも勘違いしてほしくないんだけど、1年で何冊読んだとか、そういうことじゃない。1冊の本を深く味わえるようになってほしい。いろんな連想したり感じたりできるように。例えばいりまめの話。節分のときにいりまめを廊下でいぶったの。その臭いを子供たちにかがせて、昔話の内容と結びつけるんですよ。自分の生活と物語をできるかぎり接近させていくと、リアルタイムの話じゃないんだけど、実感できるからね。言葉を教えるときもね、例えば園庭の実をね、陽をあびてとっても甘いところと、日陰でまだすっぱいところをわざわざ食べさせるわけ。子供は顔をくしゅっとさせながら「すっぱい!」ていうでしょ。でもこっちは「あまい」。この2つが合わさると「あまずっぱい」って言葉になるんだよって。そうゆう知識だけではなくて感覚を伴った体験をさせると、認識の世界を少しずつ広め深めていきます。

ひかりの子幼稚園 写真2

─ 内田先生の話を伺っていると、教室や教材の中ではなく、普段の生活の中で、大人が子供に教えてあげられることって、たくさんあるんだなぁと気づかされます。

もっと昔は普段の生活や仕事の中に子供がいたでしょ。園内に子育て村っていう場所を設けているんだけど、大人みんなで子供みんなを育てるっていう感覚を養いたいの。アフリカのある部落では、村に大人100人、子供が20人いたら、20人の子供を大人100人で育てるという風土があるの。大人が何かしていると子供は真似しようとするでしょ。日本だったら、いま仕事中で忙しいからあっちいけとなるけど、アフリカは丁寧に教えてあげるんだよ。日本の学校教育では、クラスに先生がいて、家庭ではお父さんお母さんがいて、極端ないいかたをすれば、その数人だけで子供を育てている。子供を育てることを専業化する前は全ての大人が先生だったのにね。

いま学校で学ぶのは文字が中心だけど、実際の学びは生活体験にある。そこから発生する「〜したい」という力が成長力なんですよね。子供の力ってすごいから、詰め込めばどんどん入っていくんです。でもそこで「〜したい」という力を見逃しちゃうと、弱い子になっちゃう。「大きくなったら何になる?」と聞くと、「まだ…」とか「別に」って答えが返ってくる子が日本には半分くらいいるからね。僕は幼稚園時代に完成するものなんて1つもないと思っているの。この3年間はただ大事なタネをまいて「〜したい」という芽を育てるだけ。

─ ひかりの子幼稚園に入った瞬間感じた、楽しくてどこかゆったりとした生活感。それは「村中みんなで子育てをする」という理想を、ひとつひとつ形にしてきた証でした。…内田先生が、親御さんに望まれることは何ですか?

あまり目先のできるできないに気をとられず、子供と一緒に味わう幸福感を大切にしてほしい。今日体験した出来事を家に帰って「こんなことして遊んだよ」とか、お父さんお母さんに話すでしょ。その話を、うんうん、って聞いてくれているお母さんを見て子どもはすっごく幸せな気持ちになるし、その幸せそうな表情がお母さんをまた幸せにする。僕は「幸福感」って一方的なものではなくて、親と子がいっしょに味わうことだと思うんだ。僕自身がそうだったから。

ひかりの子幼稚園 写真3

─ぜひ内田先生のお母さんとの思い出を聞かせていただけますか。

僕の場合、自分の記憶にはないような、小さいころの話をおふくろさんはとても楽しく何度も話してくれていたな…。それがインプットされて、どっかで自分の支えになっている。そのころは、お母ちゃんって言ってたんだけど、お母ちゃんは僕の話をとっても楽しく聞いてくれていた。お母ちゃんの喜びが伝わってきて、ぼくがそれを感じているのもお母ちゃんに伝わって…それが幸福感だと思うんだよね。僕は1歳半から2歳くらいのとき、風が吹くと「木がこんちは、こんちはって言ってるよ」って言ったらしいの。お母ちゃんは「あきらはこんなかわいらしい言葉を使う」ってね。きっと、その表現がお母ちゃんを幸せな気持ちにさせ、僕にもそれが流れてきて、幸福感のようなものを感じあっていたんだと思う。

─自分の記憶にない小さい頃の話を、そんな風に話してもらえたら嬉しいですよね。

そうだよ、お母さんの言葉ってすっごく大事。そんな話、忙しくてずっと忘れていたんだけどね。車を運転している時にふと思い出したのか…夢の中で思い出したのか…、はっきりとおふくろの声として聞こえてきたんだよね、あきらはね…って。不思議な感覚だったけれど、でもそういえばそんなことがあったな、ってどんどん思い出してきて、涙が出るほどうれしかったよ、思い出してよかったな。だから、おふくろさんの言葉ってとっても大事ですよ。だからね、親御さんには今しか味わえないたくさんの体験とか幸福感を子供と一緒に体験してほしいです。

─長時間に渡り付き合っていただいた内田先生。「目に見えない事を大切にすること。」昔教わった言葉が実感を伴ってよみがえりました。そして、子育てのプロは遊びのプロでした。忘れていたたくさんの「楽しい」「やってみたい」が自然と湧きおこってくる気がしました。もう一度子供の時間を一緒に今度は大人の目でみれること…親ならではの特権なのかもしれません。取材の終わりに、園長先生にアルバムえほんとアルバムブックをご覧いただきました。幼児教育を通して、子どもたちの成長を育み、親と子の絆を支えている内田先生。「僕ねぇ感激屋だから、こうゆうのみると泣けてきちゃうんだよね」と、ちょっと涙を浮かべる場面も…。内田先生からあたたかいメッセージをいただきました。

~内田園長先生からアルバムえほんへのメッセージ~

いま『絆』っていう言葉があっちこっちで使われているでしょう、とってもきれいな言葉だと思うんだけど、絆を支えていることって何かなって考えていくと、親子共に感じる幸福感だと思っているの。この絵本はその時の幸福感を残すことができるよね。内田晃 ひかりの子幼稚園 園長内田 晃 (うちだあきら)
川越ひかり学園ひかりの子幼稚園 園長
川越地区幼稚園会長/NAC代表
立正大学非常勤講師
小さいころの写真や思い出話しはこれからを生きる支えになってくれると思うの。僕はさっき話したおふくろさんの言葉が今の支えになっている。

アルバムえほんはその言葉や写真をかたちに残してあげられるよね。絶対それは子供にとって支えになると思うよ。それは過去の出来事だれど、きっとこれからの未来を支えてくれる。そして、今これを作っている親にとっては、それは幸せの、幸福感の確認だよね。よくお母さんたちが「赤ちゃんが生まれてきた時、涙がこぼれた」って言うけれど、そうした幸福感を永遠にとじこめられるというか、過ぎていってしまうその一瞬を、写真と文章にすれば残せると思うんだよね。

いつかきっと、心のふるさとになると思う。結婚するときとか、子供を出産するときとかに、自分の赤ちゃんのときの写真やおふくろさんからの言葉が支えになってくると思う。子供と親の出発点。アルバムえほんは、心のふるさと、親子の出発点ですよね。